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東京大学 大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻/
工学部機械情報工学科

生命知能システム研究室 (高橋・白松研究室)

研究内容Research

 生命知能システム研究室は,脳を機械システムのように理解し,脳のような次世代情報処理システムを創成することを目指しています.情報学・工学・神経科学を学際的に融合し,神経細胞の分散培養系からヒトの脳機能イメージングまで,さまざまなスケールの神経回路を研究対象とし,知能や意識,アートなどの創発メカニズムを探求します.脳から大規模な神経活動データを計測するために,高密度な電極アレイをはじめ,独自の新しい実験手法・装置を開発します (図1〜図3).行動実験データの取得や脳活動データの解析には、最先端の機械学習・人工知能を駆使します (図4〜図6).これらの実験データから脳活動のダイナミクスを明らかにし,脳の数理モデルを構築します.また,最新の脳科学の知見に基づき,ブレイン-マシン・インターフェースを開発し,実生活や医療での応用を目指します (図7〜8).
 目的や神経回路のスケールに応じて,細胞レベルからヒトの脳まで幅広く研究しています.研究室には,培養神経細胞を研究対象とする「in vitroグループ」,ラットの脳を研究対象とする「in vivoグループ」,ヒトの脳を研究対象とする「humanグループ」があり,学生はいずれかのグループに所属して研究を推進します.ただし,一つのグループに留まることなく,グループ間で連携しながら,解析手法や数理モデルを開発することを強く推奨しています.

- 研究室紹介動画 (link); 機械情報工学科ホームページでの神崎・高橋研究室の紹介 (link)
- 卒論・修論・D論のテーマ (link); 発表論文リスト (研究業績); これまでの主な研究成果 (link)

研究室に興味がある方に読んで欲しい記事 (オープンラボの参考資料)
 - 「最新科学でみえてきた『かしこさの招待』知能とは何か」(科学雑誌Newton 2024年8月号) (link)
 - 「機械系研究室インタビュー2022」(五月祭学生企画) (link)
 - 「神経工学」とは?(研究分野の紹介) (link)
 - 情報理工学系研究科による研究室の紹介記事「フォーカス」 (link)
 - 「人工知能 vs. 脳」東京大学広報誌 淡青 40号のコラム (link)
 - 「青春の一冊」 東京大学新聞 (2020年1月14日号) のコラム (link)
 - 「エンジニアのための脳科学のすすめ」(電子情報通信学会誌への寄稿 (link))
 - 「神経工学の潮流」(基礎研究) (電気学会論文誌への寄稿) (link, 原稿)
 - 「神経工学」(臨床応用) (論文原稿; 2020/5/28版) (原稿)
  (10年以上前に執筆した「理工系からの脳科学入門」と読み比べると,最近の進展が興味深い (原稿))


in vitroグループ

神経細胞の分散培養系を主な研究対象としています.シャーレ上に神経細胞を播種すると,自発的に神経活動が始まり,自己組織的に神経回路が形成されます.さらに,神経回路は,外部からの刺激に対しても柔軟に変化します.この様子を高密度CMOSアレイの上で詳細に観察し,神経細胞集団の回路形成と可塑性を考察します.これらの実験データに基づいて,脳のような計算機能を実現できる創発コンピュータの開発を目指しています.


実験室の様子.細胞培養実験のためにクリーンブース完備.

CMOSで1000以上の計測点から同時計測し,ロボット制御を試みた例

共同研究者

・Andreas Hierlemann教授,Douglas Bakkum博士(スイスETH) (link)
・Urs Frey博士 (MaxWell Biosystems) (link)
・池上高志教授(東大)(link)
・中嶋浩平准教授(東大)(link)
・日立東大ラボ(2016年度〜2018年度)
・潟fンソー(東京大学社会連携講座「機械の将来技術の創出」)(2012年度〜2014年度)

in vivoグループ

ラットの聴覚系を主な研究対象としています.情報理論や機械学習を駆使して,微小電極アレイで得た神経活動パターンから情報を読み出す技術を開発しています.また,行動実験を駆使して,知覚,質感,情動,嗜好など,主観的な情報が,どのように神経活動パターンに表現されているかを考察します.臨床研究と連携しながら,耳鳴や聴覚過敏の脳内メカニズムと治療方法を探求してきました.最近の研究では,ラットも音楽に反応することを見出し,音楽の起源や音楽知覚のメカニズムを脳科学的に探求しています.


防音室4部屋,防音箱5個を完備.

共同研究者

・古川茂人博士,柏野牧夫博士(NTTコミュニケーション科学基礎研究所) (link)
・中原はるか博士(江戸川橋クリニック耳鼻咽喉科)(link)
・神崎晶講師(慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科)

humanグループ

ヒトの脳を研究対象としています.脳波やMRIを利用して,ブレイン-マシン・インターフェースの開発や認知科学の研究を進めています.また,自治医大の脳神経外科と共同で,てんかん発作の診断や治療方法の研究を進めています.てんかん発作では,神経細胞の集団活動が全く制御できない状態にあります.どうして発作に陥るのか,また,どうすれば,発作を回避できるのかを明らかにすることで,神経細胞の協調的な集団活動の原理を考察します.


脳波計測用防音室を完備.MRIは学内・学外施設を利用.

共同研究者

・川合謙介教授(自治医大) (link)
・國井尚人准教授 (自治医大)
・大貫良幸講師 (自治医大)


研究室行事

合宿


学会発表,オープンキャンパス,研究室の日常


卒業論文,修士論文,学位論文の題目Dissertation

卒業論文

 年度 学生氏名 論文題目
2005 船水章大 学習による聴皮質の時空間的神経活動の状況依存的な可塑性 (概要)
横田亮 微小電気刺激による聴皮質の機能構造の書き換え技術の開発 (概要)
2006 三森雄介 音のオペラント学習による聴皮質の情報表現の変化 (概要)
2007 大坪紀子 電気的・薬理的インターフェースによる音学習中の聴皮質の神経活動の解析 (概要)
藤原正道 てんかん発作の予測のための皮質脳波解析 (概要)
2008 磯口知世 状況察知のための聴皮質における質感の情報処理 (概要)
酒井秀夫 チャネルロドプシンを発現させた光応答型培養神経回路 (概要)
2011 李夏栄 てんかん患者の多点皮質脳波における神経活動の雪崩現象の検証 (概要)
石原裕也 高密度CMOSアレイと細胞内刺激による神経ネットワークの可視化 (概要)
2012 雨宮知樹  音列オブジェクト形成に関わる聴皮質の神経活動 (概要)
大川知 成熟した培養神経回路のネットワーク形状と活動の経時変化 (概要)
2013 徳茂宏之 瞳孔径に連動した脳活動の変化(概要
日露理英 迷走神経刺激が聴知覚の神経活動パターンに及ぼす影響(概要
安田秀策 電場刺激による培養神経回路の時空間的活動パターン制御(概要
2014 曾我遼  ドーパミン報酬系が聴覚野での音情報処理に及ぼす影響(概要) 
2015   久山貴大  感覚野への電気パルス列刺激による知覚の生成(概要
古池香里  培養神経回路の同期バースト発生を担う細胞群の探索(概要
安江秀太  リザバー計算に基づく培養神経回路の状態制御(概要
2016 可部泰生 パーソナル・モバイル・ロボットを用いた補聴器装用支援システム (概要)  
土井ゆりか  ラットの自己主体感を調べるための実験系の構築 (概要)  
角田颯飛  繰り返し同期誘発刺激による培養神経回路の記憶の操作 (概要)    
松竹理匠  齧歯類における和音知覚の原始的な神経基盤 (概要)  
2017 阿部泰己  脳の電気刺激による意識にのぼる知覚の創成(概要
2018  木村武龍   培養神経細胞の統合情報量による解析(概要
森叶人 感覚野における視聴覚統合 (概要
2019  大澤龍太  拡張した情報処理容量によるリザバーコンピューティングの評価 (概要
高橋斗威  継続的な刺激が培養神経回路の成長にもたらす影響 (概要
2020  石田直輝  ラット聴覚野における情報処理容量の計測(概要
諏訪瑛介  神経細胞の分散培養系の情報処理容量(概要
2021    大島果林  げっ歯類の社会的行動に対する音楽の影響(概要
岡田大吾  脳波を利用した短時間聴力検査の開発(概要
澤田晴登  神経細胞の分散培養系の深層強化学習(概要
山木崚太郎  情動に対する音楽の影響を動物モデルで調べるための実験系(概要
2022 金井智美  日常使用に適した補聴器自動調整システムの開発(概要
高木永遠  音環境に依存したげっ歯類の超音波コミュニケーション(概要
高野雄基  自由エネルギー原理に基づく培養神経細胞による推論(概要
許鶴馨  Common Mechanism Underlying Multimodal Integration(概要
2023 浦彩人  レバー引き課題を用いた 動物モデルのタイミング予測精度の検証(概要
大沼陽介  神経細胞の分散培養系の相互接続のための高速フィードバックシステム(概要
川原佑太  培養神経細胞ネットワークの自発活動が情報処理容量に与える影響(概要
清水聡太  無意識的推論を行う神経細胞の分散培養系のリザバー性能(概要
西島皓平  経皮的耳介迷走神経刺激が聴性定常反応へ及ぼす影響(概要
星野有佐  自由行動ラットを対象としたワイヤレス瞳孔径計測システム(概要

修士論文

年度 学生氏名 論文題目
2006 内原匡信 ラット聴皮質の時空間的神経活動のニューラルネットワークによる解析 (概要)
2007 古瀬秀和 音のオペラント学習による聴皮質の可塑性 (概要)
船水章大 学習による聴皮質の状況依存的な情報表現の誘導 (概要)
横田亮 相互情報量を用いた聴皮質の情報表現の解析 (概要)
2008 野田貴大 動物モデルによる音脈生成の行動学的評価と聴皮質の生理学的基盤 (概要)
2009 大坪紀子 聴皮質における音の価値の情報表現 (概要)
2010 磯口知世 音の情動的価値に対する聴皮質の情報処理 (概要) [研究科長賞受賞]
酒井秀夫 チャネルロドプシンを発現させた培養神経回路の光制御 (概要)
高橋秀平 皮質脳波の機能ネットワーク構造によるてんかん発作の事前予測 (概要)
2011 (9月) 三田毅 超高時空間解像度のCMOSアレイ上における培養神経回路の機能ネットワークの解析 (概要)
2011 阿久津完 聴皮質の定常的な神経活動における音情報のデコーディング (概要)
2012 狩野竜示 迷走神経刺激による大脳皮質の神経活動の同期度の変化 (概要)
2013  石原裕也  分散培養系における神経活動パターンに基づく機能ネットワークの解析(概要
高橋和佐  ラット聴皮質と視床における3次元多点同時計測システムの開発(概要) 
2014 雨宮知樹 音列の規則性知覚に関わるラット聴野神経活動 (概要) 
眞田章広  高密度CMOSアレイ上の培養神経回路の神経雪崩現象の発達過程(概要) 
永田裕之  移動エントロピー法による視床・聴覚野間の信号伝達の因果性評価(概要) 
安田和樹  神経活動の位相に基づいた聴力検査装置の基礎的検討(概要) 
2015    日露理英  迷走神経刺激による知覚情報処理の変化(概要) 
安田秀策  神経細胞の分散培養系によるリザバー計算(概要) [研究科長賞受賞]
矢野隆一  分散培養系における神経細胞の移動と活動(概要) 
和家尚希  耳鳴の神経機序解明に向けた行動実験系の構築と神経指標の検討(概要) 
2016 曾我遼  睡眠中の古典的条件付けによる音嗜好性の操作 (概要)  
2017  鹿山敦至   培養神経細胞の集団同期発火パターンを生成するネットワーク構造 (概要)
藤田裕介  培養神経回路内の記憶に対するmiRNAの影響 (概要)
2018   池田成満 自己組織化を用いたリカレントニューラルネットワークの学習手法 (概要
外山大夢  培養神経回路における電気刺激による任意の神経細胞ペアの機能結合の操作(概要
松竹理匠  ラットを用いた原始的音楽知覚の理解(概要
2019 可部泰生  難聴・耳鳴者に対する補聴器順応支援(概要
阿部泰己  レポート可能な聴知覚に対する視床電気刺激の影響(概要
櫻山和浩 マイクロRNAが培養神経回路の履歴依存的応答に及ぼす影響(概要
2020 伊藤圭基  齧歯類におけるビート知覚の神経基盤(概要
木村武龍  リザバー計算の状態空間別情報処理能力(概要
森叶人  多感覚情報処理が脳の逸脱検出に及ぼす影響(概要
矢田浩章  耳鳴馴化支援アプリケーションの開発(概要
2021  高橋斗威 機械学習を用いた聴性定常反応の検出(概要
松村茜 感覚野における迷走神経刺激療法の動作原理の検証(概要
2022 石田直輝  音楽曝露によるラット聴覚野の情報処理容量の変化(概要
諏訪瑛介  神経細胞の分散培養系による臨界的物理リザバー計算(概要
2023  大島果林  統合失調症モデル動物における刺激般化(概要
山木凌太朗  顕著な刺激に対する側坐核ドーパミンの応答特性(概要

学位論文

年度  学生氏名  論文題目
2009 硯川潤 薄膜形光アドレス電極の開発とその応用 (概要)
2010 船水章大 生体信号のデコーディングによる神経情報処理の解析 (概要)
2012 (9月) 野田貴大 聴覚野における音脈分凝の神経基盤 (概要
2012 (9月)  棚田法男  神経細胞の分散培養系に嗅覚受容体を発現させた匂いセンサーの開発 (概要
2012 横田亮  神経集団による符号化の多様性と同期性の意義 (概要)  
2013 白松(磯口)知世  聴皮質における音の質感と情動情報の表現 (概要)  
2016 矢田祐一郎   分散培養系で神経集団が創発する時空間ダイナミクス [研究科長賞受賞]
2018 和家尚希   聴覚野における耳鳴の神経メカニズム
2019 (9月) 江間見亜利  Epileptic seizure detection in scalp EEG by deep learning
2019 石津光太郎 視床・聴覚野における意識的な聴知覚の神経相関
2020 (9月) 窪田智之 神経回路の過渡ダイナミクスの情報処理
2023 (6月) 池田成満  神経回路の情報表現における自発活動の機能的役割

日本学術振興会特別研究員の受入JSPS fellowships

 制度 期間  研究員氏名 研究課題
DC1 2006~2008  硯川潤 培養神経系モデルを用いた脳神経システムの機能化誘導技術の開発
DC1 2008~2010  船水章大 神経回路の動的なスイッチング機構の解明とその情動センシングBMIへの応用
DC1 2008~2010 横田亮 学習に伴う神経システムの可塑性の評価とそのモデル化
PD 2008~2009  Douglas Bakkum   培養神経回路のための刺激用光アドレス電極と計測用電極アレイの統合インターフェース
DC1 2009~2011  野田貴大   聴覚的クラスターを抽出・再構成できる神経基盤の解明とその工学的応用
DC1 2011~2013  磯口知世   音の質感がもつ情動的価値の神経学的解明
DC1 2014~2016  矢田祐一郎  培養神経回路のバイオ・コンピュテーションを実現する高解像度神経インターフェース
 PD 2015~2017  Lisandro Kaunitz   意識と無意識状態における脳内の情報伝播
 DC1 2016~2018  和家尚希   耳鳴知覚の脳活動の同定と診断方法の開発
 DC1 2024~2026  大島果林   社会的相互作用における脳の力学的連携状態の解明

東京大学 
大学院情報理工学系研究科
知能機械情報学専攻
生命知能システム研究室

高橋宏知

〒113-8656
東京都文京区本郷7−3−1
工学部2号館 81B

TEL: 03-5841-6318
E-mail:takahashi@i.u-tokyo.ac.jp


アクセス:
東京大学本郷キャンパス (map)
工学部2号館(map)


関連学科・専攻:

東京大学

 工学部 機械情報工学科 (機械B)
 大学院 情報理工学系研究科
      知能機械情報学専攻
     工学系研究科
      先端学際工学専攻
 先端科学技術研究センター
   生命知能システム分野
   (神崎・高橋研究室)