推敲例

 [推敲前] 高密度CMOSアレイは,約2×2 mm2内におよそ1万個の電極を有する多点電極アレイであり,このデバイス上で培養された神経細胞ネットワーク中の単一の神経細胞の活動電位を複数同時に観測できる.

[問題点] 高密度CMOSアレイは,約2×2 mm2内におよそ1万個 [曖昧な表現(約,およそ)] の電極を有する多点電極アレイであり [主語・述語の対応を見直した方がよい(「…アレイは,…アレイである」という繰り返し表現)] [ここで文を切れる], このデバイス上で培養された神経細胞ネットワーク中の単一の神経細胞の活動電位 [「活動電位」の修飾語が多すぎて一読では理解できない] を複数同時に観測できる.

[推敲後] 高密度CMOSアレイは,1.8 mm角内に11,011個の計測電極を有する.このデバイス上で神経細胞ネットワークを培養すると,単一神経細胞の活動電位を多点同時観測できる [主語を「私」に変更すれば,複雑な修飾・被修飾関係を解消できる]

 

 

[推敲前] 音の履歴の効果を反映する聴皮質の脳活動を調べた.ここでは,ミスマッチ・ネガティビティ(MMN)という,認知的に識別可能な変化に対して聴皮質を中心に発生する,誘発電位の陰性のゆらぎに着目した.

[問題点] 音の履歴の効果を反映する聴皮質の脳活動を調べた.ここでは,ミスマッチ・ネガティビティ(MMN)という,認知的に識別可能な変化に対して聴皮質を中心に発生する,誘発電位の陰性のゆらぎ [「ゆらぎ」に「MMNという」,「認知的に…発生する」,「誘発電位の」と修飾語が多すぎて一読では理解できない] に着目した.

[推敲後] ミスマッチ・ネガティビティ(MMN)を指標にして,音の履歴の効果を反映する聴皮質の脳活動を調べた.なお,MMNは,誘発電位の陰性のゆらぎで,認知的に識別可能な変化に対して,聴皮質付近で発生する [主語を「MMN」に変更すれば,複雑な修飾・被修飾関係を解消できる]

 

 

冗長表現の例

・「脳においては」→「脳では」

・「本実験に関しては」→「本実験では」

・「電極により計測した」→「電極で計測した」(「〜により」は,様々な用法があるので注意.英語にすると,bywiththanthrough, depending on など.意味が明確になるように書き換えたほうが良い場合が多い)

・「より近くの電極では」→「近傍の電極では」(比較するために「より」を使う場合,比較対象を明示する)

・「実験を実施した」→「実験した」

・「計測が可能である」→「計測できる」