目的と結論の記述例1
○目的
(序論で研究の背景を論じた後)本研究は,迷走神経刺激(VNS)が大脳皮質の局所電場電位(LFP)の局所的な同期に与える影響を調べる.[時制は現在形]
○結論
本研究は,VNSが大脳皮質のLFPの局所的な同期に与える影響を調べた[目的の再確認; 時制は過去形]。麻酔下のラットで,聴覚皮質付近のLFPを多点同時計測し,VNS前後で,LFPのパワーと同期度を比較した[具体的な手法]。その結果,VNSは,LFPのパワーを増大させることなく,LFPの局所的な同期を増加させることがわかった。このような同期の変化は,刺激強度を0.5 mA,周波数を10 Hzとしたときに最も顕著だった。位相同期の上昇は,gamma帯域では,聴覚皮質内で聴覚皮質内外よりも高くなり,逆に,alpha帯域やlow-beta帯域では,聴覚皮質内外で高くなった[定量的・具体的な結果]。これらの結果は,VNSが,大脳皮質の局所的な情報処理にも,広域的な情報処理にも影響を及ぼしていることを示唆する。本実験系は,VNSの生理学的作用の解明と,それに基づいた臨床的なパラメータ設定に有用であると考える[全体としての主張]。
目的と結論の記述例2
○目的
(序論で研究の背景を論じた後)
著者らが知る限り,単一細胞レベルで,長期間に渡り,ネットワーク形状と神経活動パターンの関係を調べた実験は報告されていない[従来研究での問題点のまとめ].そこで本研究では,初代分散培養系を用いて,神経回路を構成する個々の神経細胞の移動を調べ,さらにそれに伴う活動の変化の関係を明らかにする[時制は現在形].具体的には,
(i)高密度CMOSアレイを用いて,神経細胞の移動距離とそれに伴う活動の変化
(ii)発火頻度の比較的低い幼若な神経細胞と発火頻度の比較的高い成熟した神経細胞を通常の培養皿の上で共培養し,その移動と機能的結合
の二点を調べる.
○結論
本研究では,分散培養系を用いて,神経回路を構成する個々の神経細胞の移動とそれに伴う活動の変化との関係を調べ,下記の知見を得た.[目的の再確認; 時制は過去形]
(i)高密度CMOSアレイを用いて,成熟した神経細胞の移動距離と活動の関係を調べた.その結果,成熟した分散培養系でも,神経細胞は1日当たり2.0±1.0 µm 移動することがわかった.また,神経細胞の移動距離と活動の変化には負の相関があること,すなわち,低発火頻度の神経細胞が活発に移動することがわかった.[手法+定量的・具体的な結果1]
(ii)H型セパレータを用いて,幼若神経細胞と成熟神経細胞を共培養した.その結果,幼若神経細胞は成熟神経細胞よりも活発に移動していることがわかった.このような移動は,幼若神経細胞が成熟神経細胞と機能的な結合を形成するうえで,重要な役割を担っていると考える.[手法+定量的・具体的な結果2]
これらの結果は,発火頻度の低い神経細胞は活発に移動しながら,神経回路内での役割を獲得していくことを示唆する.[全体としての主張]